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FirefoxOSスマホの開発中止報道について、2・3の思うこと

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いや、いくら何でも「FirefoxOS開発打ち切り」は言い過ぎだと思うヨ。真相は、FirefoxOSスマートフォンを製品ごとに開発してきたという体制を変更する、ということだと私は思う。

追記:こんなのも出てました。

12月09日朝、たまたまTwitter経由で、TechCrunch(英語)の「Mozilla Will Stop Developing And Selling Firefox OS Smartphones」という記事を知りまして。タイトルをみて、たまげた訳です。

日本でも大量に朝から、こんなニュースが次々と上がってくるではありませんか。

実は、12月というのは、日本のITエンジニア界隈では日替わりで技術解説コラムを投稿していくITアドベントカレンダーというイベントがありまして、今年は、FirefoxOSのアドベントカレンダーに参加していて、ちょうど12月10日に自分の担当がやってきました。

そこで今回は、FirefoxOS 2015アドベントカレンダーの参加記事として、このFirefox OSスマートフォンの開発打ち切りというニュースの真相と影響について分析してみたいと思います。

これまでのFirefoxOS

さて、他の記事でも触れられているよう、FirefoxOSは、バルセロナで開催されている世界最大のモバイル展示会「Mobile World Congress 2012」で発表されました。そして、2013年7月のスペインを皮切りに、2015年末まで88プロダクト51ヶ国に展開されました(参考)。また、パナソニックからスマートTVも発売されて、国内3シリーズ6機種を販売するなど、こちらもグローバルに展開されています(参考)。

しかし、残念ながら、スマートフォンのシェアはグローバルでは1%以下と伝えられていました。今年の5月には、モジラ、「Firefox OS」の戦略を転換–価格よりも体験重視へという報道がされていました。Mozillaコーポーレーションで最高経営責任者を務めるChris Beard氏は「われわれは、人々が価格だけでなく体験を目当てに購入したくなるスマートフォンやコネクテッドデバイスを開発していく。25ドルのスマートフォンは十分な勢いを得ておらず、われわれはそのプログラムに含まれるすべての要素を追求するつもりはない」と述べていました。

FirefoxOSの開発は続いていく

FirefoxOSに注目していなかった人にはなかなか伝わっていませんが、FirefoxOSの開発は続いていましたし、今後の開発方針についても明確になっていました。じつは、先ほどの戦略転換の記事も、元記事の一部しか日本語訳されていません。残りの部分で、転換した戦略の具体的な内容を説明していました。

では、その内容は、どのようなものだったのでしょうか。

Mozilla Japanでモバイル&エコシステムマネージャでエバンジェリストを務める浅井智也氏は、今年7月に「関東Firefox OS勉強会 12th」で、FirefoxOSの今後の開発方針の変更を説明しました。これまでコンセプト実証と第1世代の製品開発から、「ユーザーにフォーカス」「Webプラットフォーム化」「コミュニティ重視」という第2段階へ移行するとしていました(参考)。

そして、次のターゲットとなるFirefoxOS 2.5が今年11月に完成することを発表しました。さらに、これまでのターゲット製品ごとの開発体制から、FirefoxOS本体を半年ごとのリリースするように変えていくと述べていました。

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今年11月に開催された、Firefox Developer Conferenceでも、Mozillaコーポレーションでプロダクトマネージャを務めるJoe Cheng氏が、FirefoxOS 2.5以降の開発計画を発表していました。

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今回の発表を分析する

今回、突然の開発中止と発表されたように見えるかもしませんが、そんなことはありません。そもそも、Mozillaにはお金があります。先日発表された2014年の決算報告でも、売上高約3億3000万ドルで前年比5%増としています。最高財務責任者(CFO)を務めるJim Cook氏は「2015年も引き続き、実に好調な収支報告となるだろう」と述べています(参考)。

となると、今回のスマートフォン開発中止というのは、どういう意味なのでしょう。

TechCrunchに掲載されている、Mozillaのコネティングデバイス担当上級副社長であるAri Jaaksi氏のコメントは、次のようになっています。

“Firefox OS proved the flexibility of the Web, scaling from low-end smartphones all the way up to HD TVs. However, we weren’t able to offer the best user experience possible and so we will stop offering Firefox OS smartphones through carrier channels.

つまり、「キャリアチャネルを通じたFirefoxスマートフォンの提供をやめる(we will stop offering)」となってるのです。Ari Jaaksi氏は、Twttierで次のコメントも出しています。

こちらでは「キャリアを通じたFirefox OSフォンの提供をやめるけど、スマートフォンによるWeb体験の改善は続ける」と述べています。

また、ITmediaの記事 にもあるように、MozillaのソフトウェアエンジニアであるKevin Grandon氏は「FirefoxOS will still be developed, but for a different purpose. Instead of being driven by carriers and commercial sales, we’ll be using it to drive the platform for many connected devices.」(Firefox OSの開発は続いているが、違う目的のものになる。キャリアを通じた商用販売で推進する代わりに、多くのコネクテットデバイスのためのプラットフォームとして使っていく)と述べています(参考)。

FirefoxOSの開発をやめるとは述べていないし、FirefoxOSフォンが消滅するとも言っていないのです。

そもそも、コネクテッドデバイスの中に、スマートフォンが含まれていてもおかしくありません。

追記:Ari Jaaksi氏のMozilla Blogへの投稿について、dynamisさんのツイート。「これからスマホを含めあらゆるものが繋がる」と言ってますね。

では、どこから開発と販売の中止という言葉が出てきたのでしょう。

それは、TechCrunch(英語)の「Mozilla Will Stop Developing And Selling Firefox OS Smartphones」(モジラ、FirefoxOSスマートフォンの開発と販売を終了)というタイトルです。

みんな、タイトルに釣られたのです。

たしかに、ここ1ヶ月ほどでMozillaが提供した、スマートフォン向けプロダクトは次のようなものがありました。

FirefoxOSデバイスが含まれていないので、AndoridやiOSへ乗り換えたようにも見えます。しかし、どれも突然でもないし、FirefoxOSスマートフォンを切り捨ててもいないのです。これだけのアプリが、たかだが1・2ヶ月作れるはずがありません。これまでのFirefoxOSの開発計画と並行して、これを作ってきたわけで。先ほどの開発計画にあるように、これまでのFirefoxOSスマートフォン一辺倒から、他のスマートフォン関連へも対象を広げて、Mozillaのコンセプトに火をつけよう(Ignite)しようとしているのです。

追記:と書いたら、Piro先輩が短い言葉で、もっとうまいこと説明していた。

こっちでは、もっとストレートに解説していた。

キャリアの戦略はどうなるか

だとすると、スマートフォンの各キャリアとメーカーの対応はどうなるのでしょうか。

Mozillaとしては、今年7月に発表していたように「これまでのターゲット製品ごとの開発体制から、FirefoxOS本体を半年ごとのリリースに変えていく」と言っていたとおりになるのだと思います。

そして、いつ・どんな製品にどのバージョンのFirefoxOSを搭載するか決めるのは、各キャリアやメーカーが独自に決めればいいことです。そもそも、FirefoxOSはオープンソースソフトウェアなわけですし。それを事前にKDDIやLGがこの段階で発表する理由はないでしょう。

たとえば、新興国の既存製品はすぐに販売停止になっていません。40ドルスマートフォンとして話題になったOrange Klifは、通常どおりFirefoxOSスマホをWebサイトに載せています。

FirefoxOSは、ハードウェア性能が高くなくてもサクサク動くし、特定のベンダーサービスに依存しないので、草の根メーカーのFreeSIM用モデルが、引き続き登場してもおかしくありません。

そもそも、スマートフォン自体がすでに成熟市場となっていると言われています(参考)。

一方で、フィーチャーフォンは、まだまだ根強い支持を集めていると言われています。MM総研は、2014年の国内出荷台数では、フィーチャーフォン出荷台数は1,040万台(6.0%増)となり、出荷台数比率は27.5%(2.6ポイント増)と発表しています(参考)。

レポートでは、その理由として、

1.フィーチャーフォン利用者にとってはスマートフォンの月額利用料金が高い。
2.同ユーザー層にとって必要な機能はフィーチャーフォンで揃っている。
3.スマートフォンに買い替えたユーザーが再びフィーチャーフォンを購入する比率が増加した。

としています。
このようなユーザーニーズに対応するため、フィーチャーフォンをまだしばらくはラインナップに加えておく必要があるのです。

そこを狙って、今年3月には、KDDI、LG U+、Telefonica、Verizon Wireless と共に、Firefox OS ベースの端末を開発する新しい構想を発表していました(参考)。ここでは、折り畳み型やスライド型、ストレート型などの様々な形状をした Firefox OS 搭載デバイスとして 2016 年に提供することを目指す、としていました。

以前は、フィーチャフォン用のOSとしてSymbian OSが広く使われてきましたが、その代替となるOSが空席になっており、そのひとつとしてFirefoxOSが注目していたのだと思います。

こちらの記事では、KDDI執行役員 商品統括本部長の山本泰英氏が、フィーチャーフォンの製品化について語っています。

ちなみに、発売から1年がたつFx0については、「GSM Factory Unlocked – International Version」というのがAmazonで販売されています。大人の事情が感じられる一品です。

コネクテッドデバイスのためのFirefoxOS

とはいえ、Mozillaとして、これからのメインターゲットになるのが、WoTやコネクテッドデバイスです。スマートTVやセットトップボックスのOSは、まだまだ継続して開発されていくのでしょう。

そこで注目したいのが、2016年1月6日-9日にラスベガスで開催されるCES 2016です。昨年は、パナソニックからFirefoxOS搭載のスマートTVが発表されました(参考)。あと1ヶ月もないわけで、何か発表するなら、今頃、突貫工事で作業を進めているのではないでしょうか。

また、メイカームーブメントやIoTに向けて、FirefoxOSを搭載した組み込みボードCHIRIMENのリリースか近づいています。RaspberryPiでも動きます。プログラミング教育ブームにも影響を与えるかもしれません。

まだまだ面白いFirefoxOS

何より、いま手元にFx0があります。

別に、ふつうに使えていますし、消滅したりもしていません。

こうなったらいいなというポイントもありますが、毎日使っていて困るところはありません。

その気になれば、HTMLとJavascriptとアプリだって作れます。ケースだって自作できます。

今回のニュースで、プレミアムなレアアイテムと呼ばれるかも知れません。

FirefoxOSは、まだまだ面白いと思います。

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PS. 明日のFirefoxOS 2015アドベントカレンダーは、ライフウッドさんだと思われます。


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